がんの治療法として、手術、放射線、化学療法、に次いで第4の治療法としてがん免疫細胞療法があります。がん免疫細胞療法とは患者自身の末梢血から得られたTリンパ球樹状細胞などの免疫細胞を体外で培養、活性化させたものを体内に戻し、その免疫細胞に腫瘍を攻撃させる治療法です。活性化自己リンパ球療法(CAT療法、LAK療法)では、通常点滴で投与を行い、樹状細胞ワクチン療法( DC療法)ではリンパ節や腫瘍に直接投与を行なっています。


今回、免疫細胞療法の著効例として、手術不適応な進行がんに免疫細胞(樹状細胞)などを投与し、腫瘍が完全消失した子を紹介いたします。
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この子は、他の動物病院で肛門周囲腺癌の手術を行ないましたが、その1ヶ月後に腫瘍が再発してしまい、さらに急速に増大しているので再手術は不可能だということで当院に来院されました。

初診時にはすでに、肛門にへばりつくように大きく浸潤した腫瘍があり、肛門を同時に切除せずに手術をすることは不可能な状態でした。

(右と左は同じ写真ですが、右の写真で腫瘍の場所などを示しています)
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ご家族と話し合い、手術以外の方法として、まず分子標的薬やCOX−2阻害剤などの薬を試しましたが、さらに腫瘍は増大し自壊・出血し、いよいよ便も出にくいようになってしまいました。
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そこで最後の望みをかけて、がん免疫細胞療法の一つである樹状細胞療法をすることとなりました。
この子から無菌的に採血をおこない、血液中から樹状細胞を取り出し、特殊な培養室で2週間細胞
を増やします。


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そして、培養増殖した1〜10億個の細胞とインターロイキン、インターフェロンなどと混ぜカクテル注射を数回行いました。
もちろん、全身麻酔も鎮静剤も必要ありません注射するのみです。

その結果、、、
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みるみる腫瘍は小さくなり、腫瘍が完全消失したのです!飼い主さんと一緒にビックリしてしまいました。
食欲元気も回復し、もちろん排便障害もありません。

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現在、経過観察中ですが、どこにも再発転移はなく腫瘍は完全消失しました。
このままずっと元気でいてくれることをただただ祈るばかりです。

治療していていつも思うことですが、やっぱりすごいのは飼い主さんだということ。
この子のために飼い主さんが最後まで諦めずに、色んな治療を頑張ってくれたおかげです!!

これからも一緒に頑張りましょう!!


院長 萩森