獣医師の梶村です。
前回までにクッシング症候群の病態と検査について説明しましたが、今回は治療について説明します。

自然発生のクッシング症候群には下垂体腫瘍性と副腎腫瘍性があることは前回までに説明しましたが、これらは治療の方針が違います。


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⑴下垂体性
治療を始める前に下垂体の腫大があるかないかをMRI、CT検査で確認しておくべきです。
下垂体の腫大があるならば、放射線治療か下垂体の摘出が勧められます。
腫大がある状態で内科治療を始めると、コルチゾール低下によるネガティブフィードバックにより、ますます下垂体が大きくなる可能性があり、昏迷や行動異常などの神経症状が出てくることがあります。
腫大が無ければ、内科療法を行います。


⑵副腎性
副腎性の腫瘍は半分が悪性の腺癌であり、肺、肝臓、リンパ節などに転移の可能性があります。
もし遠隔転移が無ければ、副腎摘出を考えます。 
遠隔転移があれば手術は行わず、QOL向上のための内科療法を行います。 


◯内科療法
コルチゾールの産生を低下させる、トリロスタンという薬を使用します。
これは用量が多過ぎると逆に副腎皮質機能低下症になってしまうので、まず低用量から始めて、定期的にACTH刺激試験を実施しモニターします。
コルチゾールをコントロールするため、内科療法は通常、一生続ける必要があります。


以上で3回分、クッシング症候群について説明しましたが、獣医師によって検査、治療について考えが異なることもあります。
多飲多尿、多食、腹部膨満、脱毛などの分かりやすい症状が見られたら、すぐに病院に連れて行くようにしましょう。


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モコも8歳なので、ホルモンの病気に注意してます。 

獣医師 梶村