病気

子宮蓄膿症の治療選択

獣医師の梶村です。

子宮蓄膿症とは、子宮内に貯留した細菌が産生する内毒素(エンドトキシン)によって、重篤な症状を示す疾患です。 

一般的な治療としては、外科的に卵巣子宮全摘出術が行われます。
 しかしそれ以外にも、ホルモン剤を使用して、子宮内の膿を排出させる治療もあります。

ホルモン剤は複数あるのですが、当院で使用しているホルモン剤はアリジンというものです。

image 
アリジンの効果としては、プロジェステロンの作用を一時的に抑制することで、黄体期から脱して、細菌の増殖を抑制し、子宮頚管を弛緩させることにより、排膿を促進します。

この薬の良いところは、今までのホルモン剤とは違い、副作用がほとんど無いことです。 
また子宮平滑筋の収縮作用が無いので、膿が外に出ない閉鎖性の子宮蓄尿症にも安全に使えます。

ただし注意しなければいけないことは次回の発情以降に再発する可能性が十分にあることです。 
これは一時的には膿を出させますが、卵巣子宮自体は残っているために、次回の発情後に同じような状況になるためです。
またアリジンは日本では市販されていないため、置いていない病院も多いです。

今回はこのアリジンを使用したワンちゃんを紹介します。

IMG_3469

チワワのバニラちゃんです。
陰部からの排膿(顕微鏡で過剰な細菌が認められた)があり、腹部エコー検査、血液検査より子宮蓄膿症と診断しました。

BlogPaint


また乳腺の腫瘤も複数認められました。 

本来ならこの時点で、卵巣子宮全摘出術と乳腺腫瘤の切除を行うところですが、バニラちゃんが貧血を起こしていたことと、乳腺が棒状に腫れていて炎症性乳癌(悪性度が非常に高く、外科は不適応)の可能性があったので、まずはアリジンを使用して、注意深く観察し、排液して子宮が小さくなれば手術することにしました。

結果的には、子宮内の液体が減り、貧血は改善し、乳腺の腫れも無くなり、状態も良好な中で卵巣子宮摘出術と乳腺腫瘤の摘出ができました。

DSCN8232


これからは今回のように、子宮蓄膿症でも緊急に手術するだけでなく、内科で状態を上げつつ、手術することも考えていいと思います。(もちろんそんな悠長に待てない子は別ですが)
それを可能にするのがアリジンです。
また様々な理由で麻酔をかけられない子にも有効です。
ただし、効果が無いかもしれないということと、次の発情後以降に再発する可能性が十分にあるということは理解しておかなければいけません。 

2017-12-14-10-56-39

獣医師 梶村

 

ロッキングプレートについて

獣医師の梶村です。

先月、名古屋まで骨折治療の実習に行ってきました。
この実習では模型を使って、実際に骨折を整復しました。

image1

上の写真は前肢の橈骨の横骨折です。
チタンのプレートを骨に合わせて切断し、少し曲げて、鉗子で仮固定し、ドリルで骨に穴を空けて、スクリュー(ねじ)を入れていきました。


IMG_0670

これは後肢の脛骨の斜骨折です。
先ほどの橈骨と同じ方法で、こちらはプレートを2枚使いました。

これらで使用しているプレートはロッキングプレートといいます。
従来のプレートは骨にぴったりとくっつけて、圧迫しなければいけませんでしたが、このロッキングプレートは骨に密着させなくても、骨とスクリューとプレートを一体化させることができます。(ネジ穴とスクリューががっちり噛み合う)

従来のプレートでは骨を圧迫することにより、骨の血流が阻害され、骨が細くなったり、治癒が遅くなっていましたが、ロッキングプレートでは圧迫の必要が無いので、より早く治癒します。
また固定力も従来のプレートよりも強いです。


ロッキングプレートの出現により、骨折の治癒が以前より容易になりました。
当院でもTITAN LOCKとMatrixという2種類のロッキングプレートを導入しています。

これは実際に、脛骨の骨折でMatrixを使用した症例です。
http://kamogawa-ac.blog.jp/archives/17917696.html

DSCN9733

49


ただし全ての骨折に使えるわけではないので、症例毎によく考える必要があります。

2017-12-03-15-24-22

獣医師 梶村

 

変な座り方や、歩き方してませんか??

看護師の和泉です。

少し遅くなってしまいましたが、明けましておめでとうございます!
気づけばもう平成も30年…。
時が経つのが早すぎて、ついていけないですが…(>_<)
今年もかもがわ動物クリニックスタッフ一同、みなさまのわんちゃん・ねこちゃんにやさしい診察・治療ができるように頑張って参りますので、よろしくお願い致します!





最近、椎間板ヘルニア疑いで、来院されるわんちゃんがおられました。



以前に獣医師の梶村先生がブログで「
進行性脊髄軟化症」のことをお話していましたが、この病気は無治療だと1週間程で命を落としてしまう病気です


椎間板ヘルニアを発症し、脊髄の障害が進行して壊死してしまうことで、最終的には延髄という神経も障害を受けて呼吸困難になり、命を落としてしまいます



椎間板ヘルニアで命を落としてしまうの?と思われるかもしれませんが、椎間板ヘルニアは状態が酷いと、命に関わる程とても怖い病気なんです。



椎間板ヘルニアの後発犬種は、ダックスフンドさんが有名ですが、その他にもフレンチブルドッグさんや、パグさんなどの幅広い犬種で起こりうる病気です。



  
dog_dachshund_choumou




年末年始で、フレンチブルドッグさんやパグさんで、「後肢をひきずる」「座り方がおかしい」といった理由で、当院にご来院された子がいました。
レントゲン検査や神経学的検査を実施し、精密検査で神経病センターにてMRIを撮る形となりました。
 



お家のわんちゃんに、このような症状がみられたら、要注意です!



□後肢を引きずる(歩き方がおかしい
□後肢の甲の部分が地面につくことがある
□後肢が麻痺している(立ち上がれない
座り方がおかしい
□運動を嫌がる(歩きたがらない
□腰や後肢に痛みがある(触ると嫌がる・怒る



inu_ashi_yowaru





首から下や前肢の痛みや麻痺は、頸椎・胸椎付近のヘルニアの可能性もあります。



pet_byouki_dog




高いところ(ベッドやソファーなど)から飛び降りたり、過度な運動は腰に負担をかけ、椎間板ヘルニアを発症するリスクが高まります。



少しでもお家のわんちゃんに、変わった症状がみられたら、すぐに当院までご来院ください!



看護師 和泉

 




 



低血糖について

獣医師の梶村です。

今回は低血糖について説明します。
低血糖とは何らかの原因により血糖値が低下した状態のことで、様々な症状が現れます。

illustrain05-etoinu05


◯症状
低血糖が重度になるにつれ、活動性の低下、性格の変化、震え、ふらつき、失禁、嘔吐、下痢、痙攣、昏睡、頻脈、低体温などが認められます。

◯原因

インスリン過剰投与
インスリノーマ
アジソン病
肝不全
重度の飢餓
若齢性の低血糖
激しい運動
悪性腫瘍
敗血症
キシリトール中毒
エタノール中毒

などで低血糖が起こります。 


インスリン過剰投与は糖尿病の治療中によく起こります。
インスリノーマは膵臓の腫瘍で、ほとんどが悪性です。
アジソン病は副腎皮質ホルモンが不足する病気です。
肝不全は門脈体循環シャントなど様々な原因により起こります。
一部の悪性腫瘍ではインスリン様の液性因子を分泌することにより、低血糖を引き起こします。
敗血症とは、感染症により重篤な全身性反応が起こることです。
 

◯検査
原因を探すため

血液検査
レントゲン検査
エコー検査
ホルモン検査(ACTH刺激試験) 

などを行います。


◯緊急治療
自宅ではガムシロップや砂糖水を口から与えてください。
病院では血管に直接、グルコースを投与します。

◯予後
原因疾患やそれのコントロール次第です。
重度の低血糖が長時間続いた場合、脳に障害が起こる可能性があります。

◯気をつけるポイント
血糖値の低下により、徐々に重篤な症状が出てきます。
上記の症状が出始めたら、すぐに病院に連れていくか、それが無理なら食事、砂糖水、ガムシロップを与えてください。
もちろんその後は病院に来て、低血糖であれば原因を探す必要があります。
命に関わる事なので、その場限りで終わらないようにしましょう。 

image


獣医師 梶村

 

犬の甲状腺機能低下症について

以前アップした記事ですが、携帯電話での表示がおかしかったため、もう一度アップします。

獣医師の梶村です。
今回は犬の甲状腺機能低下症について、説明します。 

illustrain09-inu5


この病気のほとんどが甲状腺に病変が存在し、自己免疫異常の可能性があるリンパ球性甲状腺炎と、原因が分からない特発性甲状腺萎縮の二つに大別されます。

以上の病気などにより、甲状腺ホルモンの合成及び分泌が低下することにより、様々な臨床症状を引き起こします。 


◯症状

肥満、活動性低下、左右対称性脱毛、色素沈着、パサパサもしくはベトベトした被毛、難治性再発性外耳炎、徐脈、不妊症、無発情、ふらつき、震え…など様々です。 


◯検査

血液検査にて、軽度の貧血、コレステロールの上昇、トリグリセリドの上昇、肝酵素の上昇、クレアチンキナーゼの上昇が認められることがあります。

ホルモン検査にて、T4、FT4、TSHを測定します。

T4(サイロキシン)は血液中でタンパクに結合しており、生物学的活性を持ちません。
FT4(Free T4)は血液中で遊離しており、細胞内に入って、生物学的活性を発揮します。
その比率はT4が99%、FT4が1%ほどです。
T4とFT4は薬剤(ステロイド、NSAIDs、フロセミド、フェノバルビタール、臭化カリウムなど)の影響や、非甲状腺疾患の影響を受けることがあります。

TSHは甲状腺刺激ホルモンのことです。
ネガティブフィードバックにより、甲状腺ホルモンが低下すると、それを増加させるために、TSHは上昇します。 
ただし甲状腺機能低下症の子でも、25%はTSHが上昇しないので、注意が必要です。


◯治療
レボチロキシンナトリウム(合成T4)の錠剤もしくは液剤を投与する。


◯予後

基本的には良好ですが、生涯の投薬が必要となります。
無治療もしくは治療が奏功しなければ、ごく稀に粘液水腫性昏睡という致死的な状態になることがあります。人での死亡率は15〜60%と言われています。 
症状としては、低体温や精神異常、皮膚の凹まない固い水腫などが認められます。


◯注意するポイント
甲状腺機能低下症は様々な症状があり、飼い主さんが気付かないことも多い病気です。
なので、定期的に病院に来て体重をチェックしたり、健診で甲状腺ホルモンを測定することで、早期に気付いてあげられるかもしれません。
また薬剤や非甲状腺疾患による甲状腺ホルモンの低下(ユウサイロイドシック症候群)により、甲状腺機能低下症と早とちりしてしまわないに注意が必要です。
それを防ぐためには、臨床症状、投薬、併発疾患、検査の結果などを綜合的に考える必要があります。


ダイエットしているのに痩せないなぁ、最近元気がないなぁ、皮膚病が治らないなぁ、などとお悩みの方は一度受診されることをお勧めします。 

 P1000855

獣医師 梶村

 
ギャラリー
  • そこまで見える!?歯科用レントゲン
  • そこまで見える!?歯科用レントゲン
  • そこまで見える!?歯科用レントゲン
  • そこまで見える!?歯科用レントゲン
  • そこまで見える!?歯科用レントゲン
  • 獣医師出勤表『3月』
  • 滑りはキケン!!
  • 滑りはキケン!!
  • \犬名なるほど/