内分泌疾患

犬の甲状腺機能低下症について

以前アップした記事ですが、携帯電話での表示がおかしかったため、もう一度アップします。

獣医師の梶村です。
今回は犬の甲状腺機能低下症について、説明します。 

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この病気のほとんどが甲状腺に病変が存在し、自己免疫異常の可能性があるリンパ球性甲状腺炎と、原因が分からない特発性甲状腺萎縮の二つに大別されます。

以上の病気などにより、甲状腺ホルモンの合成及び分泌が低下することにより、様々な臨床症状を引き起こします。 


◯症状

肥満、活動性低下、左右対称性脱毛、色素沈着、パサパサもしくはベトベトした被毛、難治性再発性外耳炎、徐脈、不妊症、無発情、ふらつき、震え…など様々です。 


◯検査

血液検査にて、軽度の貧血、コレステロールの上昇、トリグリセリドの上昇、肝酵素の上昇、クレアチンキナーゼの上昇が認められることがあります。

ホルモン検査にて、T4、FT4、TSHを測定します。

T4(サイロキシン)は血液中でタンパクに結合しており、生物学的活性を持ちません。
FT4(Free T4)は血液中で遊離しており、細胞内に入って、生物学的活性を発揮します。
その比率はT4が99%、FT4が1%ほどです。
T4とFT4は薬剤(ステロイド、NSAIDs、フロセミド、フェノバルビタール、臭化カリウムなど)の影響や、非甲状腺疾患の影響を受けることがあります。

TSHは甲状腺刺激ホルモンのことです。
ネガティブフィードバックにより、甲状腺ホルモンが低下すると、それを増加させるために、TSHは上昇します。 
ただし甲状腺機能低下症の子でも、25%はTSHが上昇しないので、注意が必要です。


◯治療
レボチロキシンナトリウム(合成T4)の錠剤もしくは液剤を投与する。


◯予後

基本的には良好ですが、生涯の投薬が必要となります。
無治療もしくは治療が奏功しなければ、ごく稀に粘液水腫性昏睡という致死的な状態になることがあります。人での死亡率は15〜60%と言われています。 
症状としては、低体温や精神異常、皮膚の凹まない固い水腫などが認められます。


◯注意するポイント
甲状腺機能低下症は様々な症状があり、飼い主さんが気付かないことも多い病気です。
なので、定期的に病院に来て体重をチェックしたり、健診で甲状腺ホルモンを測定することで、早期に気付いてあげられるかもしれません。
また薬剤や非甲状腺疾患による甲状腺ホルモンの低下(ユウサイロイドシック症候群)により、甲状腺機能低下症と早とちりしてしまわないに注意が必要です。
それを防ぐためには、臨床症状、投薬、併発疾患、検査の結果などを綜合的に考える必要があります。


ダイエットしているのに痩せないなぁ、最近元気がないなぁ、皮膚病が治らないなぁ、などとお悩みの方は一度受診されることをお勧めします。 

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獣医師 梶村

 

多飲多尿の鑑別診断 後編

獣医師の梶村です。
前回に引き続き、多飲多尿で注意しなければならない病気を簡潔に説明します。


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(1)慢性腎臓病
(2)腎盂腎炎
(3)子宮蓄膿症
(4)肝不全
(5)糖尿病

(6)副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)
(7)副腎皮質機能低下症(アジソン病)
(8)猫の甲状腺機能亢進症
(9)原発性アルドステロン症
(10)高カルシウム血症
(11)尿崩症
(12)医原性(グルココルチコイド投与)
(13)心因性多飲



(6)副腎皮質機能更新症(クッシング症候群)
この病気に関しては、以前詳しく説明していますので、そちらをご覧ください。

http://kamogawa-ac.blog.jp/archives/7627031.html

http://kamogawa-ac.blog.jp/archives/7631802.html

http://kamogawa-ac.blog.jp/archives/7632057.html



(7)副腎皮質機能低下症(アジソン病)
アジソン病はクッシング症候群と逆で、副腎皮質から分泌されるステロイドホルモン(グルココルチコイドとミネラルコルチコイド)が不足することで起こります。
ステロイドホルモンの不足により、多飲多尿、虚弱、体重減少、食欲不振、嘔吐、吐出、下痢、血便、徐脈、低体温、痙攣、震えなど、様々な症状を引き起こします。

診断は症状と血液検査にて、行います。
治療はステロイドホルモンを使用します。



(8)猫の甲状腺機能亢進症
この病気は高齢の猫で見られます。
甲状腺が過形成、もしくは腫瘍化することで、甲状腺ホルモンを過剰分泌することで症状が現れます。

症状としては
食欲旺盛だが体重が減少する。
攻撃性が増加する。落ち着きがなくなる。
慢性の下痢や嘔吐が見られる。 
頻脈、心肥大が見られる。 
などがあります。

治療は抗甲状腺薬、食事療法、外科的治療があります。



(9)原発性アルドステロン症 
副腎腫瘍がアルドステロンを過剰に分泌することにより起こります。
犬猫ともに稀な病気です 。

症状としては多飲多尿、高血圧、眼底出血、中枢神経症状、心血管障害などが起こります。
低K血症と副腎の腫大が診断のきっかけになることが多いです。

治療は腫瘍の外科的切除や、内服薬を投与します。



(10)高カルシウム血症
高カルシウム血症は腎臓の尿濃縮能を低下させることで、多飲多尿となります。
軽度の高カルシウム血症は無症状ですが、重度になると多飲多尿、興奮、震え、過敏、嘔吐、食欲不振などが出てきます。
重度の高カルシウム血症が持続することで、腎不全にもなります。

高カルシウム血症となる原因は様々です。
原発性上皮小体機能亢進症、悪性腫瘍、ビタミンD中毒、腎性続発性上皮小体機能亢進症、副腎皮質機能低下症、猫の特発性高カルシウム血症、成長期などがあります。

治療は原因となっている病気を治すことです。
支持療法として、皮下点滴、利尿剤、グルココルチコイドなどがあります。



(11)尿崩症
中枢性尿崩症は抗利尿ホルモン(バソプレシン)が何らかの原因で合成、分泌できなくなることで多飲多尿を引き起こします。
原因は頭部への外傷、視床下部や下垂体の腫瘍が多いですが、原因が分からない場合もあります。
治療はホルモンを補充します。

腎性尿崩症は、腎臓の抗利尿ホルモン(バソプレシン)に対する反応が低下することで起こります。
原因は慢性腎臓病、糖尿病、クッシング症候群、甲状腺機能亢進症が多いです。
治療はそれぞれの原因疾患を治療することです。
 


(12)医原性(グルココルチコイド投与) 
グルココルチコイドの副作用として、多飲多尿が見られます。



(13)心因性多飲
比較的若い犬で見られ、多飲により多尿が起こります。
他の多飲多尿の原因を除外することで、診断します。
原因は不明ですが、ストレスが関与していると考えられており、腎臓機能や内分泌機能は異常がありません。
 


前回と今回で多飲多尿の原因について説明しました。 
この症状は比較的気付きやすいと思うので、怪しいなと思ったら、まず飲水量を測って見てください。
また尿検査も非常に有効ですので、病院におしっこを持って来てください。


獣医師 梶村

 

多飲多尿の鑑別診断 前編

獣医師の梶村です。

今回は多飲多尿の鑑別について説明します。


多飲多尿とは、薄いおしっこを大量にして、やたら水を飲みたがることです。
24時間の飲水量が、犬猫で体重1kgにつき100mlを超えるなら多飲です。
また多尿は尿比重が犬で1.030以下、猫で1.035以下であれば多尿と判断します。


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この症状が出る場合は、主に以下の可能性があります。

(1)慢性腎臓病
(2)腎盂腎炎
(3)子宮蓄膿症
(4)肝不全
(5)糖尿病
(6)副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)
(7)副腎皮質機能低下症(アジソン病)
(8)猫の甲状腺機能亢進症
(9)原発性アルドステロン症
(10)高カルシウム血症
(11)尿崩症
(12)医原性(グルココルチコイド投与)
(13)心因性多飲


これらの病気を簡潔に説明します。


(1)慢性腎臓病
高齢の動物で罹患率が高く、特に猫で主要な死亡原因となります。
ある程度進行すると、慢性腎臓病はそのまま進行し続け、高窒素血症、尿毒症(消化器症状、体重減少など)が出てきます。
また貧血や、高血圧による失明、上皮小体機能亢進症による骨異常も見られるようになります。

治療には皮下点滴、内服薬、食事療法などを行います。 



(2) 腎盂腎炎
膀胱からの細菌尿が腎臓に逆流することで腎盂腎炎となることが多いです。
腎盂腎炎の症状は様々で、無症状の場合もあれば、多飲多尿、頻尿、血尿、失禁、発熱、食欲不振、嘔吐、腎臓の痛みなどがあります。

治療には抗生剤を長期的に使います。
 

(3)子宮蓄膿症
子宮蓄膿症は子宮内膜の嚢胞性増殖と細菌感染による炎症から、子宮内に膿が溜まる病気です。
発情出血後、1〜2ヶ月に発症することが多いです。
症状は多飲多尿、元気消失、食欲不振、嘔吐、腹部膨満、外陰部からの膿、発熱などです。

最善の治療は外科的に卵巣子宮を摘出することです。
ホルモン剤+抗生剤の内科治療もありますが、再発の可能性、治療に時間がかかる、副作用などの問題があります。


画像はパンパンに膨らんだ子宮です。
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(4)肝不全
肝不全とは、何らかの原因により肝臓の機能が大幅に低下した状態です。
症状としては、多飲多尿、黄疸、食後肝性脳症、食欲不振、元気消失、嘔吐、腹水、下痢、皮膚疾患などが見られます。


画像は肝臓の生検です。
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病理検査に出すことで、肝臓の状態が分かります。


(5)糖尿病
インスリンの不足や抵抗性により高血糖が生じ、様々な代謝異常を引き起こします。 
症状は多飲多尿、多食、体重減少などがあります。
犬では長期の高血糖が続くと白内障になります。
猫では後肢の麻痺が起こることがあります。

治療はインスリン製剤を使用します。 
犬では生涯インスリン注射が必要ですが、猫ではインスリン注射から離脱することができる場合があります。



後編で残りの病気を簡潔に説明します。


獣医師 梶村

 

クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)について③

獣医師の梶村です。
前回までにクッシング症候群の病態と検査について説明しましたが、今回は治療について説明します。

自然発生のクッシング症候群には下垂体腫瘍性と副腎腫瘍性があることは前回までに説明しましたが、これらは治療の方針が違います。


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⑴下垂体性
治療を始める前に下垂体の腫大があるかないかをMRI、CT検査で確認しておくべきです。
下垂体の腫大があるならば、放射線治療か下垂体の摘出が勧められます。
腫大がある状態で内科治療を始めると、コルチゾール低下によるネガティブフィードバックにより、ますます下垂体が大きくなる可能性があり、昏迷や行動異常などの神経症状が出てくることがあります。
腫大が無ければ、内科療法を行います。


⑵副腎性
副腎性の腫瘍は半分が悪性の腺癌であり、肺、肝臓、リンパ節などに転移の可能性があります。
もし遠隔転移が無ければ、副腎摘出を考えます。 
遠隔転移があれば手術は行わず、QOL向上のための内科療法を行います。 


◯内科療法
コルチゾールの産生を低下させる、トリロスタンという薬を使用します。
これは用量が多過ぎると逆に副腎皮質機能低下症になってしまうので、まず低用量から始めて、定期的にACTH刺激試験を実施しモニターします。
コルチゾールをコントロールするため、内科療法は通常、一生続ける必要があります。


以上で3回分、クッシング症候群について説明しましたが、獣医師によって検査、治療について考えが異なることもあります。
多飲多尿、多食、腹部膨満、脱毛などの分かりやすい症状が見られたら、すぐに病院に連れて行くようにしましょう。


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モコも8歳なので、ホルモンの病気に注意してます。 

獣医師 梶村



 

クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)について②

獣医師の梶村です。
前回はクッシング症候群の病態について説明しました。

クッシング症候群の診断には症状、身体検査、尿検査、血液検査、エコー検査などを行いますが、今回は診断のための特殊検査について説明します。


⑴ACTH刺激試験
採血して、コルチゾール濃度を測定します。
その後、合成ACTHを投与することで、1時間後のコルチゾール濃度を測定します。

左の画像がACTH刺激試験の簡易図で、右の画像がコルチゾール産生経路です。


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医原性クッシング症候群で副腎が萎縮している場合、コルチゾールは変化しません。
クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)の場合、コルチゾールは過剰に増加します。
この試験で正常からグレーゾーンが出た場合、低用量デキサメタゾン抑制試験を行います。


⑵ 低用量デキサメタゾン抑制試験
デキサメタゾンはステロイドの一つですが、コルチゾール量にはほとんど影響しません。


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正常な動物ではデキサメタゾンを投与することで、ネガティブフィードバックがかかり、血中コルチゾール濃度は下がります。


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下垂体性クッシング症候群の場合、デキサメタゾンではネガティブフィードバックが起こらないので、血中コルチゾールの量は変わらないか、もしくは軽いネガティブフィードバックがかかり4時間後には血中コルチゾールが下がるが、結局8時間後には上昇します。


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副腎腫瘍性の場合は下垂体に無関係にコルチゾール分泌が起こるので、デキサメタゾンを投与しても血中コルチゾールの量は変わりません。


⑶ 高用量デキサメタゾン試験
これは⑴のACTH刺激試験でクッシング症候群が疑われる場合、下垂体性か副腎性かを鑑別するために行う検査です。
⑵の低用量デキサメタゾン試験と原理は同じですが、より高用量を用いることで下垂体性のクッシング症候群であっても、ネガティブフィードバックがかかり血中コルチゾール濃度が下がることがあります。
一方副腎性のクッシング症候群ではコルチゾール濃度は変わらないので、この違いによって鑑別します。


⑷内因性ACTH血中濃度測定
下垂体性のクッシング症候群の場合はACTH濃度は高くなり、副腎性のクッシング症候群の場合はACTH濃度が低くなります。 


次回、クッシング症候群の治療について説明します。 


獣医師 梶村

 
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